ナイジェリアの漫画

ナイジェリアの漫画産業についての記事。非常に興味深かったので和訳してみた。
ナイジェリアの漫画がこんなにもハイレベルで多様性に富んでいたことは知らなかった。一部の漫画はオンラインで公開されているので興味を持った人はぜひ読んでみてほしい。

New breed of comic superhero rises in Africa | The Japan Times
http://www.japantimes.co.jp/culture/2016/01/24/books/new-breed-comic-superhero-rises-africa/#.VqRqHFOLSV4
新タイプのコミック・スーパーヒーローがアフリカに登場


ラゴス - アフリカ発の新しいスーパーヒーローを提示するナイジェリアのコミック『Aje第一巻で、大学生のTeniは湧き上がる嫉妬の怒りと紫の稲妻の中、ボーイフレンドに呪いを投げかける。


「“Koni dara fun o ni yi aye”(お前のこれからの人生は決してよくならないだろう)」Teniはナイジェリアの主要民族グループの1つであるヨルバの言葉で怒鳴る。


Teniは、アイアンマンやバットマンスパイダーマンなどに対抗するアフリカン・ヒーローを作り出している数少ない漫画産業のスタートアップの1つであるComic Republicの創業者、Jide Martinsの創作だ。


X-Menの人気キャラで、アメリカと架空の国家ワカンダの二重国籍を持つStormとは違い、Martinsが産み出すヒーローたちはアフリカで生まれ育ち、アフリカを舞台に戦う。


「大学時代、私はもしスーパーマンがナイジェリアにやってきたらどんな感じになっていただろうかと考えはじめました」


Martinsはラゴスのアパート(そのダイニングルームは若いイラストレーター達で構成された彼のチームのスタジオを兼ねている)でのインタビューでそう話した。


「人々は規範から脱却し、目指すべき新しいものを見つけようとしています」Martinsは言った。「世界を救うためには、あなたが白人である必要はないのです」


2013年、そばかすだらけの鼻に山羊髭を持った細身の37歳、Martinsは、フォレストグリーンとスノーホワイト――ナイジェリア国旗の色――のスーパースーツを身にまとったスーパーヒーロー『Guardian Prime』を処女作として出版した。


その時から、購読者数は1巻当たり100人から28000人にまで膨らんだ。


三十数ページの漫画本を無料でデジタルダウンロードのみで公開しただけだったが、Martinsは広告とマラリアに関する教育用小冊子のような派生プロジェクトなどを通じて、事業を続けていくのに十分な資金を得られている。


「人々は、アフリカの漫画はアフリカの伝統的な衣装を着た人たちが登場するものでなければならないと考えていましたが、私はそうは思いません」
「登場人物にはナイジェリアの名前を付け、ナイジェリアの人たちを救わせます。でも、彼らにはスパンデックス(化繊のスポーツウェア)を着せましょう」


アフリカ大陸の古くからの伝統・ブードゥーとオカルトの世界を現代の読者向けに順応させた、アフリカのスーパーヒーロー産業が急成長する可能性に気付いているのはMartinsだけではない。


Roye Okupeは、腐敗が蔓延し、反乱する過激派に取り囲まれた未来のラゴス、Lagoon Cityを舞台としたグラフィック・ノベル『“E.X.O.” Wale Williamsの伝説』の作者だ。


二千万人が住むナイジェリアの大都市で育った、現在30歳のOkupeは、現実に根ざしたアフリカのキャラクター市場を見据えていた。


「あなたはおそらくアフリカのヒーローの名前を5つも挙げられないでしょう」Okupeは拠点としているWashingtonでそう話す。「そして私が何よりも大好きなブラックパンサーは、架空のアフリカの国出身なのです」


スーパーヒーロー達が世界のチケット売り場を支配している時、ナイジェリア人はClark Kent(スーパーマン)やPeter Parker(スパイダーマン)達のようなワスプの名簿の中に、彼らに代わるヒーローを独自に提示しようとしているのだとOkupeは言う。


「もしあなたが10年前にナイジェリア出身のスーパーヒーローを発表したとしても、誰も注目しなかったでしょう」Okupeは述べた。「しかし今やそれは人気産業となっています。人々は多様性を求めているのです」


漫画の研究者達は、アフリカン・スーパーヒーロー現象は、これまで圧倒的に白人が演じてきたマントを羽織った十字軍(バットマン)達に対する、当然の反応なのだと考えている。


「それは長年の懸案だったと思います」と、2013年に出版された書籍『Black Comics: Politics of Race and Representation』の共同編集者であるRonald Jacksonは語った。


「私たちは、異なるアイデンティティを理解し評価するようになるにつれて、アフリカの漫画が描く世界をますます受け入れるようになってきています」


「映画やテレビ番組のような主要な派生作品は、必ずしもまだ十分に展開されてはいません。これらはアフリカの漫画業界にとって次の段階なのかも知れません」



Comic Republicのスタジオに戻る。全員30歳未満のイラストレーターのチームは、いつの日か彼らのキャラクター達が銀幕に登場することを願っている。


彼らは、『スターウォーズ』のジェダイの戦士達よりも強い魔女などのアフリカのキャストが、世界の観客達を十二分に沸かせる日が来るのは間違いないと思っている。


ギリシャ神話のゼウスのことは知っていても、ヨルバの雷神Shangoのことは誰も耳にしたことがないでしょう」23歳のイラストレーターTobe Ezeoguは言った。


「それは、人々が慣れ親しんだものに対する異なる視点なのです」


Martinsと彼のチームは、『Aje』や『Guardian Prime』に続いて、戦いのために霊界へ入っていくAvonomeや、ヨルバの恐怖の神を分身に持つラゴス大学の講師であるEruといったキャラクターも創作してきた。


「私たちは人々が漫画を受け入れてきている状況に衝撃を受けています」Martinsは言った。「驚くべきことです」